2005年09月12日

[コラム]白票と棄権は同じ意味

法定得票数に関して調べているとき

興味深い記事を見つけた。「白票と棄権票は同じ」というタイトルである。
よく気に入った候補者がいなければ白票を投ずるべしと言っている人がいるが、これはとんでもない間違いであるということである。

白票と棄権の違い

白票つまり無効票を投ずることと棄権することの大きな違いはどこに出るかというと、投票率に出てくる。
投票率は政治への関心のバロメータとして見られるが、選挙のシステム上においては殆ど意味がない。何故なら、現在の公職選挙法では最低投票率が定められておらず、極端な話、1人しか投票しなくても、その選挙は有効と扱われてしまうのである。

当選の最低ラインは投票率ではなく有効投票数で算定される

法定得票数とは、当選資格を得るために必要な最低の票数のことであるが、その算定の根拠は投票率ではなく有効投票数である。
前述のように、白票と棄権の違いは投票率に出てくるのだが、有効投票率の観点からすると、白票も棄権も意味としては同じである。何故なら、公職選挙法第68条で無効投票は以下のように定められているからである。
第68条 衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
1.所定の用紙を用いないもの
2.公職の候補者でない者又は第86条の8第1項、第87条第1項若しくは第2項、第87条の2、第88条、第251条の2若しくは第251条の3の規定により公職の候補者となることができない者の氏名を記載したもの
3.第86条第1項若しくは第8項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同条第1項各号のいずれにも該当していなかつたものの当該届出に係る候補者、同条第9項後段の規定による届出に係る候補者又は第87条第3項の規定に違反してされた届出に係る候補者の氏名を記載したもの
4.一投票中に2人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの
5.被選挙権のない公職の候補者の氏名を記載したもの
6.公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
7.公職の候補者の氏名を自書しないもの
8.公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの
2 衆議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
1.所定の用紙を用いないもの
2.衆議院名簿届出政党等以外の政党その他の政治団体(第86条の2第10項の規定による届出をした政党その他の政治団体を含む。)の名称又は略称を記載したもの
3.第86条の2第1項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同項各号のいずれにも該当していなかつたもの又は第87条第5項の規定に違反して第86条の2第1項の衆議院名簿を重ねて届け出ている政党その他の政治団体の名称又は略称を記載したもの
4.第86条の2第1項の衆議院名簿登載者の全員につき、同条第7項各号に規定する事由が生じており又は同項後段の規定による届出がされている場合の当該衆議院名簿に係る政党その他の政治団体の名称又は略称を記載したもの
5.一投票中に2以上の衆議院名簿届出政党等の第86条の2第1項の規定による届出に係る名称又は略称を記載したもの
6.衆議院名簿届出政党等の第86条の2第1項の規定による届出に係る名称及び略称のほか、他事を記載したもの。ただし、本部の所在地、代表者の氏名又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
7.衆議院名簿届出政党等の第86条の2第1項の規定による届出に係る名称又は略称を自書しないもの
8.衆議院名簿届出政党等のいずれを記載したかを確認し難いもの
3 参議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
1.所定の用紙を用いないもの
2.公職の候補者たる参議院名簿登載者でない者、第86条の3第2項において準用する第86条の2第7項後段の規定による届出に係る参議院名簿登載者若しくは第86条の8第1項、第87条第1項若しくは同条第6項において準用する同条第4項、第88条、第251条の2若しくは第251条の3の規定により公職の候補者となることができない参議院名簿登載者の氏名を記載したもの又は参議院名簿届出政党等以外の政党その他の政治団体の名称若しくは略称を記載したもの。ただし、代表者の氏名の類を記入したもので第8号ただし書に該当する場合は、この限りでない。
3.第86条の3第1項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同項各号のいずれにも該当していなかつたもの若しくは同条第2項において準用する第86条の2第10項の規定による届出をしたもの又は第87条第6項において準用する同条第5項の規定に違反して第86条の3第1項の参議院名簿を重ねて届け出ている政党その他の政治団体の同項の規定による届出に係る参議院名簿登載者の氏名又はその届出に係る名称若しくは略称を記載したもの
4.参議院名簿登載者の全員につき、第86条の3第2項において準用する第86条の2第7項各号に規定する事由が生じており又は第86条の3第2項において準用する第86条の2第7項後段の規定による届出がされている場合の当該参議院名簿に係る政党その他の政治団体の名称又は略称を記載したもの
5.一投票中に2人以上の参議院名簿登載者の氏名又は2以上の参議院名簿届出政党等の第86条の3第1項の規定による届出に係る名称若しくは略称を記載したもの
6.一投票中に1人の参議院名簿登載者の氏名及び当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等以外の参議院名簿届出政党等の第86条の3第1項の規定による届出に係る名称又は略称を記載したもの
7.被選挙権のない参議院名簿登載者の氏名を記載したもの
8.公職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名又は参議院名簿届出政党等の第86条の3第1項の規定による届出に係る名称及び略称のほか、他事を記載したもの。ただし、公職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名の記載のある投票については当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の同項の規定による届出に係る名称若しくは略称又は職業、身分、住所若しくは敬称の類を、参議院名簿登載者の氏名の記載のない投票で参議院名簿届出政党等の同項の規定による届出に係る名称又は略称を記載したものについては本部の所在地、代表者の氏名又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
9.公職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名又は参議院名簿届出政党等の第86条の3第1項の規定による届出に係る名称若しくは略称を自書しないもの
10.公職の候補者たる参議院名簿登載者の何人又は参議院名簿届出政党等のいずれを記載したかを確認し難いもの
引用が長くなってしまったが、要するに衆議院でも参議院でも候補者名(衆議院比例代表は政党名、参議院比例代表は候補者名又は政党名)を正しく記入していない票は無効と扱われてしまうということである。白票の場合は各項の最後の2つ「自書していないもの」と「記載が確認し難いもの」に該当すると思われる。法定得票率がこうした無効投票を除いた有効投票数ベースで計算されている以上、白票も棄権も意味としては同じということになってしまう。

白票と棄権は与党に優しく野党に厳しい

冒頭で紹介した記事に白票を投じることで全ての政党・立候補者に警告を与えるという考えが間違いであることが詳細に書かれているのでそれを参照して戴きたい。
そういえば、森喜朗元総理は「有権者は寝ていてくれた方がいい」という発言をしていた。これは何を意味するのだろうか。
得票率を上げるには、分子(支持者の数)を多くするのと分母(有効投票数)を小さくするという2つの方法がある。特に、組織票を持っている候補者の場合、支持者は一定数が保証されるので、有効投票数を小さくすることによって、得票率を上げることが可能になる。つまり、白票や棄権は強い組織票を持つ候補者に強いという訳である。そうなると、一般庶民より特定の組織に味方する代表者が政治家として選ばれてしまう。これでは一般庶民の声が政治に届かなくなってしまう。

白票と不買運動の違い

不買運動は企業にとって売上減少という形で実の部分でダメージが与えられ、企業に対してインパクトを与えることができる。しかし、選挙において白票を投じることによって、政治家の給料が下がることもないし、何より、前述のように当選か落選かを決めるのが投票率ではなく有効投票数であること勘案すると、得票率の分母が小さくなるだけで、却って強い組織票を持つ候補者を有利にしてしまう。これでは、所期の効果が得られるどころか逆効果でしかない。
やはり、有効投票数を下げるような投票は意味がない。そんなのは棄権したのと同じである。ならば、自分が政策を掲げて立候補するか、より自分の考えに近い候補者に投票するのが民意を政治に反映させる上において重要になるだろう。

9月14日追記

白票=不信任を前提にしないのが現行の公職選挙法
現在の公職選挙法は信任投票を前提にしていない。理由は、日本が中国などのような一党独裁の国ではないからである。
中国など一党独裁の国では1つの選挙区において唯一の政党が候補者を1人立てるだけである。政党に属さない無所属候補も出馬しない。そうなると、この選挙は信任投票として信任・不信任を問う選挙となる。日本においては総選挙と並行して行われる最高裁判所裁判官の国民審査がこれに近い。この場合は「白票」が不信任票としての意味がある(但し、現実に行われている信任投票では「白票」が信任を表すようにしているようだ)。
しかし、日本には複数の政党が存在し、1選挙区の1議席を巡って、複数の政党或いは無所属の個人が争う。こういう場合は信任投票ではなく、単純に議席を獲得するに相応しいとされる候補者に投票するのが理に叶っている。
不信任票を有効にした場合の問題
仮に不信任を意味する白票が意味をなした場合、白票の数が各候補者の得票数より多くなった時の処理のし方が問題となる。
白票が最多得票となった場合、
  1. その選挙は無効とし、再選挙する
  2. その選挙区からの当選者はなしとする
という処理が容易に想像できる。
前者の場合は再選挙となるため、選挙運動が再び行われることになる。1回の選挙にあたり、候補者1人当り5千万円かかっていると言われている。つまり、再選挙があった場合、倍のコストがかかってしまうというのである。これでは、各都道府県或いは市区町村選挙管理委員会の負担が高い。
後者の場合はその選挙区の住民を代表する人が選ばれないことになる。代表者が選ばれないということは、その選挙区の意向が政治に全く反映されないというのに等しい。存在しない代表者によって法案が提出されることはないし、他の政治家の法案に反対することはない。代表の選ばれなかった選挙区の意向が伝わらない状況で果たして民主主義といえるのだろうか。
また、全ての選挙区で白票が全ての候補者の数が上回った場合、政治家が存在しなくなる。一体誰がその後の政治を行うことになるのだろうか。
このように、白票を不信任票として認めた場合の問題点がある以上、白票を無効票として扱うのが理に叶っている。


posted by 須藤雅史@多摩急行電鉄 at 11:07| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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